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研究 vs 勘

「PFCさえ合えば食品の質は何でもいい(IIFYM)」は本当か? 通説 vs 研究

公開日:

執筆: 吉崎 槙吾監修: 染田 智信

「タンパク質・脂質・炭水化物の数字が揃えば、食べるものは何でもいい」——IIFYM(If It Fits Your Macros)はフィットネスコミュニティで広く支持されるアプローチだ。カロリー計算の自由度を高め、食の楽しさを守れる一方、食品の質を完全に無視することへの懸念も根強い。実際のところ、研究は何を示しているのか。

Round1

PFCが同じなら食品の種類は体組成に影響しないか

言われていること

フィットネス界隈の一般的な主張(YouTube・SNS)

タンパク質・脂質・炭水化物のグラム数が同じなら、チキンブレストでもマクドナルドでも体重の変化は変わらない。体は「鶏肉か揚げ物か」を区別しない。カロリー収支こそが全てだ。

VS

研究が示すこと

  • 短期的な体重変化はPFCとカロリーが揃えばほぼ同じになるとする研究は存在する。
  • しかし超加工食品中心の食事と非加工食品中心の食事を比較した研究(Hall et al., 2019)では、超加工食品群が自由摂取条件下で平均500 kcal/日多く摂取し、体重増加も有意に大きかった。
  • また超加工食品は食物繊維・微量栄養素が乏しく、ビタミンやミネラルの不足が体組成・回復・ホルモン環境に間接的な影響を与える可能性がある。
  • 「PFCを厳密に揃えた条件」では差が縮まるが、現実の食行動では超加工食品は過食を誘発しやすい。
判定

厳密にカロリーとPFCを管理できる場合、短期的な体重変化は食品の質に関わらず近似する。しかし現実の食行動では超加工食品は過食リスクを高め、微量栄養素不足も生じやすい。「完全に等価」とは言えない。

信頼度:賛否が分かれる
Round2

食品の質(加工度・微量栄養素・食物繊維)はパフォーマンスと回復に影響するか

言われていること

柔軟な食事管理を支持するフィットネスコーチの主張

アスリートやボディビルダーも「クリーンな食事」信仰は過剰だ。マクロさえ満たせばパフォーマンスも変わらない。サプリでビタミンも補えるし、食品の種類を制限するのは精神的ストレスが大きい。

VS

研究が示すこと

  • 食物繊維・ポリフェノール・ビタミンD・マグネシウム・亜鉛などの微量栄養素はトレーニング後の炎症応答・免疫機能・筋タンパク合成の調節に関与することが示されている。
  • 超加工食品はこれらを軒並み低含有であり、腸内細菌叢の多様性も低下させる可能性がある。
  • 腸内環境の悪化は全身性炎症と関連し、回復スピードに影響する可能性が指摘されている(Helms et al., 2014など)。
  • ただし直接的な「食品の質→パフォーマンス改善」を示すRCTは少なく、エビデンスの質はまだ限定的。
判定

微量栄養素と腸内環境を介したパフォーマンスへの間接的な影響は理論的に妥当だが、「食品の質を上げれば競技パフォーマンスが有意に向上する」と断言できるほどのRCTはまだない。マクロ管理を維持しつつ、食品の質にも配慮する実践的な折衷案が現時点では合理的。

信頼度:根拠は弱い
Round3

IIFYMアプローチの現実的な落とし穴は何か

言われていること

IIFYM支持者の一般的な主張

IIFYMはカロリーと数字を管理している限り、何を食べても体づくりの邪魔にならない。精神的に無理なクリーン食より続きやすく、長期的なアドヒアランスが高い。

VS

研究が示すこと

  • 超加工食品は高度に口当たりよく設計されており、腹満感ホルモン(レプチン・GLP-1)の分泌応答が低い一方、食欲を促進するグレリン分泌が高まりやすいことが報告されている。
  • Hall et al.(2019)の無作為化クロスオーバー試験では、カロリーを「自由に摂ってよい」条件下で超加工食品群は非加工食品群より大幅に過食した。
  • つまり「マクロを守る」という前提が崩れやすいのが超加工食品中心の食事の最大のリスク。
  • 一方、柔軟な食事管理(食品の80%は栄養価の高いもの、20%は好きなものという「80/20ルール」など)は過度な制限よりアドヒアランスが高いとする観察研究もある(Monteiro et al., 2019)。
判定

IIFYMの理念(過度な食品制限をしない)は精神的アドヒアランス面で合理的だが、超加工食品を主体にすると過食しやすく、微量栄養素も不足しやすい。「PFCさえ合えば食品の質は何でもいい」は誇張であり、食品の大部分は栄養密度の高いホールフードで構成しつつ、嗜好食品を組み込む柔軟なアプローチが実践的に優れている。

信頼度:賛否が分かれる

公開日:

吉崎 槙吾

執筆

吉崎 槙吾

エンジニア / BODYDATAリサーチ担当

エンジニアの仕事は裏付けを取ること。筋トレの通説も、ソースコードと同じで中身を読んでから信じます。

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染田 智信

監修: 染田 智信

トレーニング指導とサプリメント業界での実務経験の観点から内容を確認しています